【使い分けが命】スキーのズラしは3種類|止める・走らせる・カービングに見えるを解説
「ズラしてしまうのは、まだ下手だからだ」そう思って練習していませんか。
カービングを目指すほど「ズラさないように」とエッジに直接荷重が入りたわまず走らない。エキスパートレベルでもよく見かける行き詰まり方です。
実はここには大きな前提の誤解があります。
ズラしは1種類ではありません。
- 止まるためのズラし
- スピードをつなげるためのズラし
- そしてほぼフルカービングに見えるズラし
などと、目的の違う技術が同じ言葉でまとめられてしまっているのです。
この記事では、ズラしを3種類に分けて整理し、それぞれの使い分け・やり方・つまずく原因までを解説します。
ワタルちなみに、僕はズラした滑りでクラウン合格しました。上達目指すなら理解必須です。
スキーのズラしは3種類|「減速するため」だけがズラしではない
結論から言います。スキーのズラしは、目的で分けると3種類あります。
- 止まる・減速するためのズラし
- スピードをつなげるためのズラし
- ほぼフルカービングに見えるズラし
多くの解説で語られているのは①だけです。板を横に向けて雪の抵抗を受け、スピードを落とす。たしかにこれもズラしですが、これしか知らないと「ズラし=ブレーキ=初級技術」という理解で止まってしまいます。
| 種類 | 目的 | スピード | シュプール |
|---|---|---|---|
| ①制動のズラし | 止まる・減速する | 落とす | 幅の広い面 |
| ②推進のズラし | スピードをつなげる | 落とさない | ズラしているのに細い |
| ③切れて見えるズラし | 実践向き | ターンスピード上がる | ちょっと太い線 |
ワタル②と③が使えるようになると、滑りの自由度が一気に上がります。ここが中級で止まる人と伸びる人の分かれ目です。
そもそもスキーのズラしとは?板の向きと進む方向の「差」のこと
ズラしとは、スキーが進んでいく方向と、板が向いている方向に差をつくり、板を横方向にも動かしながら滑ることです。
専門用語でいうと「迎え角を作る」などと表現します。
(難しい言葉作んなや)
いちばん極端な例が、直滑降から板を真横に向けて止まる動きです。進行方向は谷、板の向きは真横。この差が最大になっているため、雪面抵抗も最大になり、止まれます。
逆にこの差がゼロに近づいていくと、板は向いている方向にそのまま進み、雪面には細い線が残ります。
ズラしとカービングは別の技術ではなく、この「差」がどれくらいあるかの違いだと考えてください。
ズラしの量を決めるのは「角付け」と「回旋」の2つ
ズラしの量は、気合いや体重移動ではなく、次の2つの操作で決まります。
- 角付け|板をどれだけ傾けるか
- 回旋|板の向きをどれだけ変えるか
角付けを弱めて板をフラットに近づけ、脚を回して板の向きを変えれば、板はズレていきます。
逆に角付けを強めてエッジを雪に食い込ませれば、板は向いている方向に進んでズレなくなります。
回旋は、上半身や腰をひねる動きではありません。股関節から脚を回す動きです。ここを間違えると、後述するNG動作に直結します。
ベースはズラし|板が引っかかるかどうかの違いでしかない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい考え方です。
ワタル僕の感覚では、スキーはすべてベースがズラしです。そのあとに板が引っかかるか、引っかからないか。その違いしかないと思っています。
ズラし・カービング・フルカービングを、まったく別の3つの技術として覚えようとすると必ず混乱します。実際にはすべて同じ操作の上にあり、板が雪面に引っかかった量が違うだけです。
スキーの動作研究でも、現実のターンの多くは純粋なズラしと純粋なカービングの中間に分布する「ハイブリッドなターン」として扱われています。0か100かではありません。
この前提を持ったうえで、ここからは3種類のズラしを1つずつ見ていきます。
ズラしの種類①|止まる・減速するためのズラし
1つめは、多くの人が「ズラし」と聞いて思い浮かべるものです。板を進行方向に対して横向きに使い、雪面抵抗でスピードを落とします。
制動のズラしを使う場面|急斜面・混雑・荒れた雪
使う場面ははっきりしています。
- 斜度がきつく速度が出すぎる
- 人が多くスピードを出せない
- 雪が荒れてエッジが弾かれる
- 止まりたい時
- コブに入る手前で速度を整える
ズラしは「上級者になれば使わなくなる技術」ではありません。安全に滑るための土台であり、どのレベルでも一生使い続けます。
制動のズラしのやり方|エッジを緩めて板全体を回す
やることはシンプルで、角付けを緩めて板をフラットに近づけ、股関節から脚を回して板の向きを進行方向とズラします。
このときのイメージは、平らな場所に置いた竹とんぼを、真ん中を軸にしてクルクル回す動きです。テールだけを外に放り出すのではなく、板全体が回るのが正解です。
回旋ベース(クルクル回す)のイメージですが、
もちろん角付け(板を傾ける)も必要です。
この状態では板は雪面を面で削っているので、シュプールは幅のある跡になります。それで合っています。
ワタル急停止が制動のズラしの最上位かと思います。上級者でもできない人が多いので練習あるのみ!

これしかできないと「スピードが繋がらない滑り」で止まる
問題は、ズラしがこれ1種類しかない状態です。
ターンのたびに減速するため、リズムが途切れ、ターンとターンの間で毎回スピードを作り直すことになります。
「一生懸命滑っているのに、なんとなくモッサリして見える」滑りの正体はこれです。
ワタルここから抜け出す鍵が、次の「推進のズラし」です。
ズラしの種類②|スピードをつなげるためのズラし
2つめは、ズラしているのにスピードが落ちないズラしです。
矛盾しているように聞こえますが、板の動かす方向が違うだけです。制動のズラしが板を「横」に逃がしているのに対し、推進のズラしは板を「前」へ送り出しています。
推進のズラしの感覚|板をトップ方向へ押し進める
ワタル感覚としては、スキーをトップ方向へ押し進めていく感じです。ブーツのタングを押す、スネ圧を保ったまま板を前に送り出すイメージが近いです。
制動のズラしのように板を横にして雪の抵抗を強く受け止めるのではなく、ズラしながらも板を前へ走らせ続けます。雪の抵抗を受け止めるのではなく、受け流しながら前に使うという違いです。
できているかの目安は「ズラしているのにシュプールが細い」
判定はシンプルです。滑ったあとに振り返って、シュプールを見てください。
横方向へのズレ幅が大きくならず、細い跡のまま板が進んでいれば成功です。逆に、跡がベタッと広がっていれば、それは制動のズラしになっています。
後傾では推進のズラしは成立しない
この動きにはポジションが不可欠です。
後傾になると、そもそも板をトップ方向へ押し進めることができません。かかとに体重が残ったままでは、板は前ではなく横にしか動かないからです。
センターからやや前方向へ圧をかけられるポジションを保ってください。スネがブーツのタングに軽く当たり続けている感覚が目安になります。
ズラしの種類③|ほぼフルカービングに見えるズラし
3つめは、見た目にはカービングにしか見えないのに、中身はズラしているという領域です。
ワタル僕の滑走映像がまさにこれです。かなりカービングに近く見えると思いますが、実際にはわずかにズラしを入れています。
トップを入れた結果として、テールがわずかにズレる
ポイントはターン前半です。
板のトップをターンしたい方向へ入れていくと、その結果としてテールがわずかに外へ動きます。「板を振る」のではなく「トップを入れる → 結果としてテールが少しズレる」という順番です。
ここを逆にして、テールから先に動かそうとすると、まったく別の(そして上達を止める)動きになります。順番だけは絶対に間違えないでください。
谷回りが短く見え、横ズレがきわめて少ない
そのうえで②の推進のズラしを使い、スキーを必要以上に横へ向けないようにします。すると滑りは次のような特徴になります。
- 谷回りが少し短く見える
- 横ズレが非常に少ない
- 見た目はフルカービングに近い
- それでも弧を積極的に調整できる
最後の1つが決定的です。完全にエッジだけで曲がっていると、弧の大きさは板の傾きとスピードでほぼ決まってしまいます。わずかにズラしを残しておくことで、自分の意思で弧を作り変えられるのです。
フルカービングよりターンが速いことがある
ワタル単純に角を立ててフルカービングするより、このズラしを使ったほうが板が速く、ターンスピードも上げやすいと感じています。
「ズラす=遅い」という思い込みが、ここで完全にひっくり返ります。ズラしの幅を小さくコントロールしながら板を前へ走らせるのは、かなり高度な技術です。
実際、スキーの動作研究でも、パラレル系のターンは「ズラしを伴うターン」と「カービング」という並列の分類として扱われています。上下関係ではありません。
3種類のズラしの使い分け|種目別の考え方
推進のズラしは、大回り・中回り・小回り・コブまで、基本的にすべての種目で使える技術です。
「この種目ではズラす/ズラさない」ではなく、ズラしの量と質を状況に合わせて変えるという整理が実態に近くなります。
| 状況 | ズラしの考え方 |
|---|---|
| 中回り | 推進のズラしを理解しやすい |
| 小回り | 推進のズラしを使いやすい |
| 大回り | フルカービングとの使い分けが重要 |
| コブ | ズラしを含めたコントロールが必要 |
| 急斜面・難しい雪質 | 制動と推進を状況に応じて調整 |
最初に感覚をつかむなら小回りか中回りがおすすめです。
大回りは、すでにカービングやフルカービングができる人ほど「わざわざズラす」意味が理解しにくく、遠回りになりやすいためです。
ワタルとりあえず、難しいと感じるならターンサイズは無意識でOKです。
急斜面では、そもそもズラしが物理的に必要になる
「急斜面で切れない」と落ち込む必要はありません。これは技術論ではなく物理の話です。
アルペンスキーのターンを数理モデルで分析した研究では、純粋なカービングが成立するのは比較的緩い斜面に限られるとされています。示されている臨界斜度の目安は、スラローム板で約17度、大回転板で約19度、滑降板で約21度。これを超えると、コース内に留まるためにある程度のズラしを入れざるを得なくなると説明されています。
つまり斜度が上がるほど、ズラしを混ぜるのが物理的に自然な選択になります。トップ選手ほどズラしを使いこなしているのは、当然の結果というわけです。
ズラしでやってはいけない3つのNG
推進のズラしを狙ったのに、ただの横ズレになってしまう。これがいちばん多い失敗です。原因はほぼこの3つに絞られます。
NG1|後傾になり、板を前へ押し進められない
スピードへの恐怖心で体が後ろに引けると、板の前半分が使えなくなります。トップ方向へ押し進めるどころではなくなり、板は横にしか逃げません。
NG2|内倒して外足に乗れていない
エッジを立てようとして上半身ごと内側に倒れ込むと、外足に体重が乗らず、板は雪面を捉えないまま横に滑り落ちます。
倒すのは体ではなく、股関節を主体にした脚です。上半身は谷側を向けたまま、脚だけを傾けてください。
NG3|テールだけを外へ振ってしまう
もっとも多く、もっとも根深いのがこれです。「ズラそう」と思った瞬間に、テールだけを外へ放り出してしまうパターンです。
推進のズラしでは、テールを意図的に振り出しません。トップを入れてスキー全体を前へ動かした結果として、テールがズレるのが正解です。
テールを軸にして振り回すような動きになると、スキーの軸そのものが倒れやすくなり、そこから先へ進めなくなります。心当たりのある方は、ここだけを集中的に直す価値があります。
ズラしを使い分けるための練習ドリル3選
3種類を頭で理解したら、あとは体で確かめるだけです。緩斜面の整地から順に進めてください。
斜面に対して板を横に向け、角付けを緩めて滑り落ち、強めて止まる。これを繰り返します。速く落とす・ゆっくり落とす・止めるを自分で切り替えられるようになれば、制動のズラしの土台は完成です。
推進のズラしをつかむなら中回りか小回りです。スネ圧を保ったまま、板をトップ方向へ押し出し続ける意識で滑ります。減速しないことが不安に感じたら、それは正しい方向に進んでいるサインです。
同じコースを、ズラし量を変えて3本滑り、そのつどシュプールを振り返って確認します。跡の幅が3段階に変わっていれば、ズラしを意図的にコントロールできている証拠です。
スキーのズラしに関するよくある質問
ズラしてしまうのは下手だからですか?
いいえ。問題なのは「意図しないズレ」であって、ズラしそのものではありません。
自分で量を選んでズラせているなら、それは技術です。判断基準は、ズラす量を大きくしたり小さくしたりを自分で切り替えられるかどうか。
切り替えられないなら癖、切り替えられるなら技術と考えてください。
ズラすと検定で減点されますか?
種目によります。「ベーシック」が付く種目のように、そもそもズラしを含んだ滑りが求められる種目もあります。
減点されるかどうかは、ズラしたかではなく種目の趣旨と合っているかで決まります。
評価の運用には開催団体や検定員による幅があるため、受検前に最新の要項を確認し、不安な点は事前講習で直接質問しておくと安心です。
カービングの練習はしなくていいのですか?
必要です。ただし対立するものではありません。
エッジで板をたわませて曲がる感覚がないと、③の「切れて見えるズラし」には到達できません。
カービングの練習で得た感覚の上に、ズラしの量を調整する技術が乗るという順番です。
ズラしと横滑りは同じものですか?
横滑りはズラしの一形態です。進むべき軌道に対して板を横に向け続け、板が滑り落ちていく動きを指します。
制動のズラしの純粋な練習形と考えてください。
実際のターンでは、この横滑りの要素を弧の中に少しずつ溶かし込んでいくことになります。
推進のズラしができているか、シュプール以外で分かりますか?
いちばん確実なのはシュプールですが、体感でも判断できます。
ターン中に「押し戻される」感じが強ければ制動のズラし、「前に運ばれていく」感じがあれば推進のズラしです。
ただし初中級のうちは感覚が当てにならないことも多いので、必ず振り返って跡を確認してください。
小回りと大回りでズラしは変わりますか?
使える技術は同じですが、つかみやすさが違います。
推進のズラしは小回り・中回りのほうが感覚をつかみやすく、大回りはすでにカービングができる人ほど「わざわざズラす」意味が分かりにくくなります。
まずは中回りやターンサイズを考えず試すのがおすすめです。
まとめ|ズラしは「量と目的」を選べた時点で技術になる
スキーのズラしについて、最後に要点を整理します。
- ズラしは目的別に3種類ある
- ベースはズラし、あとは引っかかるかどうか
- 推進のズラしは板を前へ押し進める
- 目安はズラしているのに細いシュプール
- テール振り出しではなくトップから入れる
次にゲレンデへ行ったら、いつもの中回りで1本だけ「板を前へ押し進めるつもり」で滑って、振り返ってみてください。シュプールの幅が細いままなら、そこが推進のズラしのスタート地点です。
とはいえ、後傾・内倒・テール振り出しは自分では気づきにくい動きです。
シュプールを見ても「なぜ幅が広がったのか」までは分からないことがほとんどで、何シーズンも同じところで止まってしまう方が多いのもこれが理由です。
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