【謎】近年黒字なのに2023-24シーズンを最後に閉業したスキー場があった…|マウントジーンズ那須【Mt.JEANS】

「黒字経営だったのに、なぜこのスキー場は閉業してしまったのか」。
今回取り上げるのは、栃木県にあったマウントジーンズ那須(Mt.JEANS)です。冬場は7万人、グリーンシーズンも約5万人が訪れる人気スキー場でしたが、2023-24シーズンをもって完全閉業となりました。
この記事では、私たちSnowHubが動画内で調べたデータをもとに、黒字経営だったスキー場が閉業に至った背景と、そこから見えてくるスキー場経営のリアルを整理していきます。
マウントジーンズ那須(Mt.JEANS)とはどんなスキー場だったのか
マウントジーンズ那須は1994年12月にオープンしたスキー場です。
山頂1,150m・山麓950mで標高差は約500m、コースを細かく分ければ最大10コース程度という規模でした。中級者向けのゲレンデが多い一方、上級者向けコースやこぶ面もあり、幅広いレベルの滑走者が楽しめるゲレンデだったようです。
- 1994年12月オープン、2024年3月に約30年の歴史に幕
- 標高差約500m、コース数は最大10コース程度
- 冬季は約7万人、グリーンシーズンも約5万人が来場
- 高速道路からのアクセスも良く、スキー教室も定期開放
2009〜2010年頃には来場者数15万人ほどを記録した時期もあり、集客力自体は決して低くないスキー場でした。
- 1994年開業、約30年の歴史を持つ栃木県のスキー場
- 冬7万人・グリーンシーズン5万人が訪れる規模
- ピーク時は年間15万人が来場したことも
黒字なのになぜ閉業?最大の要因は「温暖化による雪不足」
2023年12月、マウントジーンズ那須のスキー場閉鎖がアナウンスされました。
私たちが調べたところ、その理由として大きいのが「地球温暖化による雪不足」です。特にここ10年ほどの降雪量が深刻に少なく、かつてのピーク時と比べて3分の1程度という証言も得られました。
気象庁のデータも調べました。1994年の平均最高気温は+1℃、平均最低気温は-5℃でした。
それが2000年には最高+4℃・最低-3℃、2015年には最高+3℃・最低-5℃、そして直近2024年には最高+5℃・最低-4℃という数値になっています。
最低気温はそれほど大きく変わっていない一方で、平均最高気温がじわじわと上昇しているのが分かります。これは人工降雪機を稼働できる時間帯が事実上減っていることを意味します。
人工降雪機は一般的に-2℃〜-4℃程度にならないと稼働できません。ドカ雪の前に人工降雪で足場を作り、地熱を遮断しておかないと、せっかく降った天然雪も定着せず溶けてしまいます。
マウントジーンズ那須では2000年頃に全10コースへ人工降雪機が導入されましたが、その稼働可能な時間帯自体が年々短くなっていた、というのが私たちの分析です。
スキー業界全体で見ても、平成28年時点での集客力は全盛期と比べて3割程度まで落ち込んでおり、マウントジーンズ那須だけの問題ではないことが分かります。
一方で、平成28年時点の全国スキー場集客のうち約10.2%をマウントジーンズ那須1施設で集めていたというデータもあり、業界内での集客力自体は決して弱くなかったこともわかります。
「絶景」を売りにするスキー場は本当に集客に強いのか
マウントジーンズ那須は、テレビでも「絶景スキー場」として紹介されたことがあります。
ただし私たちは、「絶景を売りにするスキー場は潰れる傾向がある」と見ています。実際に私たちが独自にアンケートを取った結果、景色を基準にシーズン券を購入する人はほぼいませんでした。
1回だけ来場する人であっても、景色の良さを理由に選ぶ人はかなり少数派でした。データだけで見ると、景色の良さは冬のスキー客の集客にはあまり直結していないことになります。
マウントジーンズ那須自体は黒字経営だったため、「絶景頼みの経営で失敗した」わけではありません。あくまで景色は集客の一要素であり、閉業の直接的な原因ではなかったと私たちは考えています。
閉業をめぐるアンケート結果と、経営判断という視点
私たちは「温暖化が原因で黒字スキー場が閉業したことについてどう思うか」というアンケートも実施しました。
- 「仕方ない」と回答した人が約75%
- 「経営問題があったのでは」との指摘は約17%
温暖化のような外部環境の変化は、企業としてコントロールできる範囲を超えています。だからこそ「経営としてできることに絞って対応するしかない」という指摘にも一定の説得力があります。
私たち自身も事業を営む立場から、「閉業=失敗」と単純に捉えるべきではない、と考えています。
「やります」と始めた事業から「やめます」に方向転換するのは、勇気のいる決断です。今回のケースも、単なる失敗ではなく、全体のベネフィットを考えた経営判断だった可能性がある、と私たちは見ています。
閉鎖後のマウントジーンズ那須はどうなる?
気になる閉鎖後の対応についても調べました。スタッフの一部は、同系列のハンターマウンテン塩原スキー場へ異動になったとのことです。
マウントジーンズ那須の近くには、かつて大きなスノーリゾートがあったエリアもありますが、現在はエーデルワイススキー場のみが営業を続けている状況で、周辺は一部廃墟化が進んでいます。
完全閉鎖後のゲレンデは伐採され、最終的には国有地として返還される見込みです。ただし、これは単純な話ではありません。
私たちが調べたところ、札幌五輪の際に作られた滑走コース跡が、大会終了から半世紀近く経った今も景観問題として残り続けている例があり、原状復旧の難しさがうかがえます。
現在、マウントジーンズ那須の駐車場は完全に立入禁止となっており、隣接する「那須どうぶつ王国」の臨時駐車場として再利用されています。
まとめ|黒字閉業から見えるスキー場経営のリアル
マウントジーンズ那須(Mt.JEANS)の閉業は、集客力や経営状態が悪かったから、というより「雪不足という外部環境の変化に対応しきれなかった」という側面が大きい事例でした。
黒字であっても、雪が降らなければスキー場は営業できません。そして「撤退」も、事業を続けていく上での一つの戦略になり得る、という視点は、スキー場に限らず様々な事業に通じる考え方だといえそうです。
- 黒字経営でも、温暖化による雪不足で閉業に至った事例
- 平均最高気温の上昇で、人工降雪機を稼働できる時間帯が減少
- 「絶景」自体は閉業の直接的な原因とは考えにくい
- 「撤退」も経営判断としての戦略になり得る
マウントジーンズ那須のようなスキー場があったことを知り、少しでも身近なゲレンデや雪山に関心を持ってもらえたら嬉しいです。

